トヨタの都市プロジェクトで話題!BIGってどんな事務所?ビャルケ・インゲルスってどんな人?
こんにちは。Kyoheiです。
https://twitter.com/s_seeken/status/1217788591981527041
先日、トヨタの都市プロジェクト「Woven City」が話題になりましたよね。
設計はデンマークの建築家、ビャルケ・インゲルス率いるBIG(Bjarke Ingels Group)が担当することになりましたが、BIG日本で設計を手がけるのは初めてなため、BIGをよく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ビャルケの略歴やBIGのこれまでのプロジェクトを紹介していきたいと思います。
1.BIG設立までの道のり
ビャルケは1974年、デンマークに、エンジニアの父と歯医者の母との間に生まれました。
彼は最初は漫画家を目指していたそうなのですが、大学で建築に目覚め、建築家を志します。
そして卒業後、かの有名なレム・コールハース率いるOMAで働き始めるのです。
1998年から2001年までOMAで働いた後、ビャルケはPLOTという事務所を共同で設立します。PLOTは解散する2005年まで、数々の建築を設計しました。
PLOTの解散後、2006年にBIGを設立。現在まで数々の著名な作品を世に生み出し、2020年、日本でのプロジェクトを発表するに至るのです。
2.BIGの作風と代表作
続いて、BIGの作風ついて紹介していきます。BIGの作風を知るのに一番良いのは、BIGの作品集「HOT TO COLD」です。このブログでも何回か紹介しているのですが、BIGの最新のプロジェクトが紹介されている書籍になります。5000円ほどの値段ですが700ページを超えるボリュームで、ダイヤグラムやパースが豊富で英語が読めなくても楽しめる内容となっていますので、是非学校の図書館で探したりしてみてください。
Amazonのリンク貼っておきます。
Hot to Cold: An Odyssey of Architectural Adaptation
- 作者:Bjarke Ingels Group BIG
- 出版社/メーカー: Taschen America Llc
- 発売日: 2015/03/30
- メディア: ペーパーバック
ビャルケはこの本の冒頭で「ENGINEERING WITHOUT ENGINES」という言葉から始めています。彼の作品は、建築の形態によって気候やエネルギーをコントロールしようとする極めてパッシブなアイデアから全体が導かれることが多いのが特徴です。そのアイデアは、熱いところから寒いところまで、様々な気候に対して有効であるという思想から、本の名前をHOT TO COLDと名付けました。
お洒落ですね。笑
今回はこのコンセプトに沿って、環境配慮に対してより顕著な作品を中心に見ていきましょう。
◆MAGIC CARPET
このプロジェクトは中東で計画されたメディア会社の本社建設プロジェクトです。
なるべく小さな建築面積の中で、技術的、景観上の理由により超高層が提案できないという制約の中、2棟のボリュームをもった建物を建てるというのがプロジェクトの条件でした。
BIGは敷地調査の中で、現地のオープンスペースでの生き生きとした人々の活動を目にし、それを活かそうと考えると同時に、中東の厳しい暑さを感じ、いかに熱さをしのぎながら外部空間を豊かにするかにチャレンジしていきました。
そこで彼らは、2棟のボリュームの間に大屋根をデザインし、日射遮蔽を行いながら豊かな外部空間をつくっていくアイデアを採用します。
また、2つに分割されたボリュームの間には風が通り抜け、小さいボリュームによってオープンスペースで空気がかき混ぜられることによって、空気の温度を下げる働きをします。
分割されたそれぞれの空間は、1つ1つ報道スタジオなどになっており、放送の様子などが外部に表出するようになっています。メディアオフィスとしてのシンボル性と、風を砕くという2つの意味を持った形態になっているのです。
◆CITE DU CORPS HUMAIN
続いては、フランスのモンペリエに計画された、人の体に関しての美術館の計画です。
人の指を組んだような、有機的な曲線が特徴的な建物ですが、ファサードにパッシブなデザインが計画されています。
従来的なルーバーの考え方からすると、南は水平ルーバーを設け、東西は垂直ルーバーを設けるのが一般的ですが、
ファサードのルーバーの向きが、有機的に曲線でデザインされているのがこの建物の特徴です。そのルーバーの向きは、太陽高度から一番日射遮蔽に効率的な角度を計算して、それを繋ぎ合わせたものになっているのです。
このようなファサードで環境負荷を低減させようという考え方は「ファサードエンジニアリング」といった分野で日本でも研究が盛んですが、BIGもこうした考えを積極的に取り入れているということですね。
◆LOOP CITY
最後に紹介するのは、コペンハーゲンでの都市プロジェクトです。
LRTという言葉をご存知でしょうか。Light Rail Transitの略で、次世代型路面電車とも呼ばれ、欧米では昔からの路面電車の軌道を再利用し、公共交通として活躍しています。
日本では富山市が先進的事例として注目を浴びています。
コペンハーゲンでも、周辺地域をLRTでつなぐプロジェクトの構想が進んでおり、BIGが計画に関わっています。
では、建築のアイデアを見ていきましょう。
駅周辺というのは人が集まりやすいため、必然的に床の需要が上がり、密度が増えます。駅自体にも床を増やすことが合理的であるというのが1枚目のダイヤグラムです。
2枚目は、駅を中心として密度を高く(床を多く)した場合、離れるほど床の需要は減っていきます。それを形態に落とし込むとなだらかな山の形になります。
山の形の上を電車が走ることを考えると、上り坂では減速し、下り坂では加速します。山の頂上が駅になるわけですから、エネルギーを効率的に使用して電車を走らせることができます。建築=電車の加速・減速装置と捉えているわけです。
駅に停車する際、ブレーキをかけますし、発射する際はアクセルを踏みますから、そこで使われるエネルギーを節約できるということです。
しかし、線路等は街を分断してしまうエッジとしても働いてしまいますし、路面電車だからといって中心地で歩道レベルと同じレベルを走ると、動線の干渉で電車の遅延にもつながります。駅を山形にすることで、街の分断を軽減し、動線処理を上下で行うこともできることを表しているのが4枚目のダイヤグラムです。
このように、建築の形態によって、路面電車のエネルギー効率を操作しながら、街を繋ぐ役割を果たすプロジェクトになっています。まさにENGINEERING WITHOUT ENGINEですよね。
3.まとめ
いかがだったでしょうか。どれも形態が環境的操作に結び付き、さらに建築や都市によっても意味のある、2重3重で有効的な形態操作が特徴な作品が多いですよね。
今回はENGINEERING WITHOUT ENGINEのコンセプトを強調するために、あえて環境的な趣の強い作品をピックアップして紹介しましたが、他にもダイナミックな形態操作が特徴的な、素晴らしいプロジェクトが沢山あるので、是非書籍を買ってみてください。
Hot to Cold: An Odyssey of Architectural Adaptation
- 作者:Bjarke Ingels Group BIG
- 出版社/メーカー: Taschen America Llc
- 発売日: 2015/03/30
- メディア: ペーパーバック
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